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&éclé Diary

私たちは、美味しい料理をきっかけに、真の“美味しい時間”をお届けしたいと考えています。
今月から、憧れのあの人が、アンドエクレ ル ビストロで過ごした美味しい時間を少しだけご紹介。
毎月リレー・ダイアリーでお届けします。
今月は、誰が、誰と、何を食べ、どんな会話をしながら、どんな一日を過ごしたのでしょうか―?

interview 01

by Takako Shirasawa

YOSHIKO KRIS-WEBB

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「ママ、髪やってー!」
鏡を見ながらどのバッグと靴を合わせようかと悩んでいると、小学生の息子が嬉しそうにやってきた。私は、ホワイトティーの香りがふんわりと漂う、愛用のオイルをほんの少しだけ息子の髪になでつける。
これがちょっとしたお出かけをする前の、私たち親子のお決まりの儀式。

「これから誰に会いに行くの?」
向かうのは池袋。感度の高い人たちから絶大な人気を誇っている表参道のネオビストロ、アンドエクレが2店舗目を池袋パルコにオープンしたということで、色々な縁が重なり、なんとお誘いいただいてしまったのだ。

「今日はね、ママと2人だけのデートなの。お兄さんになってナイフとフォークを使うのが上手になってきたから、今日はママにご飯を取り分けてくれる?”紳士”は取り分けるのも上手なのよ♪」
なにがきっかけなのかは分からないけれど、幼稚園の頃から”紳士”というものに憧れを抱き続けている息子は、嬉しそうに「やってみる!」と強くうなずいた。

この機会に他の誰でもない、息子1人を誘うことにしたのは、事前の情報でシェアスタイルで楽しめるフレンチと聞いたのがきっかけ。

しかも表参道より少しカジュアルで、だけど食やインテリアへのこだわりは変わらないとなれば、これは息子の向上心を思いきり刺激できる絶好のチャンス! と早々に予約をお願いし、今日を迎えた。

さてさて、池袋駅東口を出て、見回さなくともすぐに目に飛び込んでくる看板を辿れば1、2分でついた池袋パルコ本館。
入り口すぐのエレベーターに乗り込むと、“なりきり紳士”モードに突入している息子はエレベーターボーイさながら各階で降りる人を誘導し、8階へ到着。
私たちの目的のレストランは、目の前に佇んでいた。
あー、方向音痴な私でもたどり着きやすくて助かる!
いや、真面目な話、歩き回るのが困難なベビーカーを押すママでもこのアクセスの良さは便利なはず。

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路面のレストランほど入る前の緊張感はないものの、そこはやっぱりアンドエクレ。ひとたび店内に入れば、クリス-ウェブ佳子さんの監修するインテリアはファッションビルの中にいることを忘れさせる世界観。
ただおしゃれに洗練されているだけというのではなく、ヴィンテージ家具などを使った温かみのある雰囲気でウェルカムムードいっぱいなのも、さすが。佳子さんと一緒にいるといつも漂ってくる”センスのある母”感はここでも十分に発揮されている。

少し大人っぽい雰囲気にちょっとはしゃいだ様子で奥の椅子に座ろうとした息子に「今日はデートだから、眺めのいい場所を女性に譲ってね」と促し、席についた。

アラカルトもあるけれど、やっぱりここで食べたいのは「S&S」と呼ばれるコース。コースとはいっても全三皿でアンドエクレのスペシャリテであるクーリシャス以外は一緒に来た人とシェアして楽しめるという気軽な構成。二皿目は4種、三皿目は6種の中から選べると聞いて、息子も一緒にメニューを覗き込む。

難解とまではいかないけれど、子どもには少しだけ説明が必要な、ほどよいメニュー書きも実はよいところ。大好きなおなじみプレートが目に飛び込んできたら他には見向きもせず、これ!と決めてしまう、なんていうこともない。ひとつひとつ、想像を働かせながら一緒に内容を考え、分からないところはお店の方へ質問しながらオーダーするメニューをゆっくりと決める。
こんな工程も、母としてはそろそろ息子に知ってほしい、いや、大人同士であっても大切にしたい、外食の楽しみかたのひとつなのだ。

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ウーロン茶と白ワインで乾杯をして(ここで口にしたワインは総じてとっても好みだった!)ほどなくやってきたのは、アンドエクレの焼印付きのウッドプレートに乗せられた、豪華な5種の前菜たち。
思わずうわー、美味しそう!と目を輝かせたのは、息子だけでなく私も同じだった。

素材の良さがひきたつ前菜はどれも絶品だったけれど、息子はニース名物のソッカ(日本で本物の味を食べられるなんて!)と野菜スティックをつけるためのアンチョビソースが、私は自家製パテドカンパーニュと牡蠣のガーリックコンフィローズマリー風味が特に気に入り、夢中になったものをお互いあげ合うというシェアならではの楽しいディナーが始まった。

「取り分けるときはね、絵を描くみたいに素敵にお皿に乗せるのも大切なのよ。貴方の分はママがやってみるね」
「ほんとだ!じゃあそれママが食べ終わったら僕もっとカッコよく乗せてみる!」

「ママ、これはなに?」
「それは初めて食べるものかもしれないねぇ。食べてみてごらん。」
「あれは好きじゃなかったけどこっちは美味しくてびっくりした!」

そんな会話を楽しみながら、どんどんと食事は進んでいった。

そう、トングで得意げに取り分けてくれたお皿は初とはいえ結構ぐちゃぐちゃで、お皿の周りにいくつか落ちているものも。それにあれは好きじゃないなんていう言葉、静かなレストランで言われたら私は一体どんな恐ろしい顔をするのだろう。でもキリキリせずに、あーシェフ、ごめんなさいーと思いながらテーブルの上に落ちたきのこを拾いあげたり、「そう、でももう少し大人になったら美味しく食べられるようになるわ。だってこれ、ママにはすっごく美味しい!」なんて余裕の返しができたりするのはこのレストランだからこそ。

かしこまりすぎず、適度なざわつきとおしゃれなフランス音楽(私のパリ時代の思い出les Nubiansがかかってた♪)でフォークやナイフの扱いを間違えて多少ガチャリと音をさせても神経質になりすぎなくて大丈夫。テーブルは白いクロスではなく、おしゃれな、でもこぼしてもさっと拭けば何もなかったことになるホワイトウッドテーブル。
そして、ミシュランの星を7年連続も獲得したスターシェフによる本格的な絶品フレンチにワイン、異国情緒あふれる空間。

年齢を問わず心地よく過ごせて美味しくておしゃれ、なんていう三拍子揃った空間が日本でも楽しめるなんて。

もちろんお行儀が悪いことは褒められたことではないし、騒ぐなんてもってのほかだけど、多少の失敗なら周りも余裕で微笑める優雅な空間はそうそうない。
子ども用のレストランのように「なんでもOK」な雰囲気とは、もちろんまったく違い、ほどよい緊張感の中、ママがきちんと笑顔で食事のマナーを教えられるこの場は、日本の明るい未来にもつながる、とっても大切なことじゃないだろうか!(なんて壮大な!)

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その後も、ライスに野菜や肉などが並べられ、鮮やかなソースで彩られた、口にも目にも美味しいクーリシャスをそれぞれぺろり。

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メインに選んだ牛ホホ肉の赤ワイン煮込みのほろほろ加減に「ほっぺたが落ちそう!」と二人で感激しながらシェア。

最後は追加で頼んだデザートまできっちり完食!息子は一度食べて嫌いだと言っていたベリーもあっさり克服し、表参道と同じく文句のつけようのない、ヘルシーな極上料理の数々を堪能した。

終始、親子ともにとってもリラックスした贅沢すぎるひととき。
母親なら誰でも、ああしなさい、こうしなさい、と眉間にしわを寄せて毎日どうしても叱ってしまうのが常だとは思うけれど、たまにはこんな時間があったなら、他の毎日ももっとお互いがハッピーでいられる気がする。

実は池袋がかなり久々だった私。最近は住みたい街ランキング一位と知りつつも、昔流行った映画の影響でちょっと怖いイメージさえあった(私たち世代ならわかるはず!)のですが、本当にここに来られてよかった!
こんな機会を与えていただき心から感謝!

今回は大雨で行けなかったけれど、次は、とっても気になっている南池袋公園に寄ってから、ノンストレスなひとときを家族で過ごしに再訪しよう!
そう誓いながら、私は小さな紳士に手をひかれて帰ったのだった。

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【今回頼んだメニュー】
S&S
・5種の前菜
・クーリシャス
息子 : オレガノ風味のカミアカリ玄米&ホームメイドソーセージとブロッコリーソテーwithブロッコリークーリ
私 : ジュニパーベリー風味 ”風さやか” ライス & エビのロースト with 舞茸クーリ
・メイン
牛ホホ肉の赤ワイン煮込み

・デザート

息子 : ガトー“インビジブル” 見えないリンゴのケーキ
私 : フルーツグラタン ベリー & ピスタチオ / ダブルエスプレッソ

幼い頃の経験が、シェフ・オリヴィエを料理人の道へと導いた。白澤さんの息子さんにとっても、この日の食事が素敵な思い出となり、“紳士”への扉のカギとなったら嬉しい。
伝統あるフランス料理を、日本在住18年になるオリヴィエが感じる、日本ならではのあたたかいシェアスタイルでカジュアルに楽しんでほしいという想いで作ったコース。こんなにもあたたかい親子が楽しんでいる姿を、これからも見続けられますように。

今月の人
白澤 貴子(Instagram ID:takakoshirasawa)
ファッション系フリーランスエディター&ライター。小学生になる男の子のお母さんでもある。ファッション誌、広告・カタログなどを中心に、多くの撮影ディレクションやライティング、ファッションブランドのブランディングなどを手がける。趣味は乗馬。